『日本村100人の仲間たち The HOPE』(吉田浩 著)が2020年8月に辰巳出版より発売されました。
今回、株式会社天才工場さまより書籍のご提供いただいたので、子育て中の主婦目線でレビューします。
この本は「童話」として描かれていて、文章も子どもでもわかりやすい表現ですし、挿絵や色もたくさん使われているので小学生くらいの子どもから大人まで読めます。
コロナ禍の暗いムードに辟易してしまう今だからこそ家族で読みたい一冊。
ユーモアたっぷりのこの本を読み終えるころには、この自粛期間を少し広い視野で捉え、少し目線を上げて毎日を送れるようになりますよ。
『日本村100人の仲間たち The HOPE』は、日本や世界各国をひとつひとつの「村」に見立ててその様子を紹介しています。
6つの章に分けて約50の小さなエピソードが詰め込まれている本です。
元になっているのはコロナ禍の統計データや実際のできごと。
日本でも報道されていたニュースや、あまり知ることのなかった世界のニュースや統計データを作者が童話にして分かりやすく、そしてユーモラスに伝えてくれます。
例えば、環境保護団体WWFが提唱している2メートルのソーシャルディスタンスを、ジャイアントパンダ1匹分の「パンダディスタンス」と言いかえてみようというショートストーリー。
この2メートルは「コブハクチョウ1羽」「キングペンギン2羽」「オサガメ1匹」であり、動物たちが目の前に並んでいると思えば楽しく過ごせるという提案が、かわいらしいイラストとともに紹介されています。
このほか、日本と世界との比較も面白おかしく描かれています。
コロナ禍だからこそ垣間見える国民性が興味深い!
そしてコロナの中でも、希望を持って人生を前向きに歩んでいる人が大勢います。
日本のテレビのニュースばかり見ていると、その日の感染者の増減の数字ばかりに目がいって、一喜一憂してしまいます。
自分が狭い世界だけを見て、不安を増幅させていたんだなと気づきました。
日本のテレビの編集で切り取られていない統計データや世界のニュースを知ると、少し客観的な視点で「コロナの今の世の中」を落ち着いて眺められますね。
わたしがいいなと個人的に思ったストーリーは、2020年4月29日に日新聞に掲載されたドラえもんからのメッセージという設定の「STAY HOME」プロジェクトの広告。
「だいじょうぶ。未来は元気だよ」というメッセージにはとても励まされます。
今の行動ひとつひとつが未来につながっているという、当たり前のようでなかなか普段は意識しないことを気づかされました。
巻末に話の元となったニュースや統計データも掲載されているので、気になったら自分でより深く調べる際にも便利です。
ほとんどのストーリーが1~2ページに短くまとめられていますが、その中に著者のちょっとしたユーモアやメッセージが散りばめられています。
例えば、世界中でマスクの取り合いになっているという話の最後には、新聞が「不信感も感染」と見出しをつけたと締めくくられています。
反対に、タイガーマスクを名乗る人が次々と現れ、マスクや寄付をしてくれた話もありました。結びには、「だれでも、いつでも、どこにいても、タイガーマスクになれるのです」というメッセージ。
別々に掲載されている話ですが、どちらもマスクが足りないという時にどんな行動をするのかという話。こんなコロナ禍だからこそ、どのように行動するかが問われているのだなと個人的には感じました。
著者の押し付けではなく、読者それぞれが考えるきっかけを作れるように工夫されている点がこの本の懐の広さであり、童話という手段が取られている理由なのかもしれません。
このような編集の方法や切り口は新鮮で、出版プロデュース業をしている著者だからこそなのかなと思いました。
また、読んでいて違和感を感じる点もありました。
例えば、コロナ禍でコロナ離婚が増えているという話。
ただ、この違和感の原因を自分に問いかけてみることで気づくこともあります。
コロナ離婚を考えることもあるかもしれないけれど、一方で家族の大切さに気付くことができるのもコロナ禍だからこそではないでしょうか。
むしろわが家は、外出自粛によってほかの人と会えない分家族でいられることのありがたさを感じました。
巻末のデータ元を見てみると、コロナ離婚を考えたことのある人は4割(女性向けメディアLip Pop)とのことですが、わたしはコロナであってもなくても夫婦間で嫌なことがあれば離婚を考えるのはあり得ることだと思うんです。
データを一方(コロナ離婚を考えたことのある4割)だけ見るのともう一方(それ以外の6割)を見るのでは違った見方ができまね。
自分の感じた「何か」を考えることで、自分の考えや感性を見つめなおすことができ、家族で話し合うきっかけになります。
著者の想いのエッセンスが、読者に気づきやほんの少しの違和感、面白さを見出してくれるのがこの本の特徴。
バラバラに見える約50のエピソードがさまざまな視点からのコロナ禍の今を映し出しだしていて、自分の世界を広げてくれます。
短くわかりやすい文章で書かれたストーリーなので、子どもから大人まで気になったときにすぐ何度でも読み返すことができて、噛めば噛むほど味の出るスルメのような童話集。
一家に一冊置いておけば、家族のだれかがコロナ鬱になりそうなときに、助けになるかもしれません。
そして、コロナが終わった未来に見返したときには、今回のさまざまなニュースを振り返るよい題材にもなりそうです。
新型コロナウィルスはもちろん早く収束してほしいのですが、この『日本村100人の仲間たち The HOPE』を読むと悪いことばかりではないと気づかされました。
ピンチの中でこそ、人々のつながりが大切だったり、誰かのために優しくできたりする人が世界にはたくさんいます。
著者も同様に、自分のできることとして、この本の著者印税10%を全額、赤十字などの医療機関に寄付するそうです。
自分も、コロナ禍で下を向いてばかりいるのではなく、前向きになって自分に今できることは何か考えるようになりました。
本のあとがきには次のように記されています。
100年に一度のピンチではなく、100年に一度のチャンスかもしれないのです。
わたし自身、まずは周りの家族への感謝の気持ちを忘れず、家にいる時間が長いからこそできる子どもとの時間を大切にしたり、離れて暮らす実家へ頻繁にオンライン帰省をしたりしたいと思います。
コロナ禍を前向きに生きるための一冊を家族の本棚に並べてみてませんか。
\『日本村100人の仲間たち The HOPE』税込990円はこちら/